四、正月について
1.正月って何?
暮れにはどの家庭でも大掃除をし、のある家では注連縄を取り替え、玄関に注連飾りを付けます。新年を迎えるための準備です。こうした支度が何の為に行われるのかが忘れられつつあります。
正月が三日間お休みなのは、歳神様をお迎えするためでした。としの初めに神様が家々を訪れ、一年の実りと幸せをもたらしなさる日でした。そこで神迎えのため家の中をきれいにします。注連飾りは家内が清浄になった証拠です。古くはこの期間に先祖も来訪しました。
明治以降太陽暦が採用され、太陰暦の正月がずれました。これに追儺祭(節分)という中国伝来の行事も加わり、一年の始まりと初春の区切りとが重なることになります。
ちなみに「鬼」は中国では「魂」に通じます。正月に先祖のみたまを迎えることと節分の行事とには重なりがあるわけです。
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2.雑煮の由来は?
神様にお供えしたお下がりを煮炊きしたものがです。雑煮に餅や野菜が入っているのはそのような事情でして、神様や祖先とお供えを一緒に頂くことはその力を頂戴する事です。
そのお力を恩頼(神様のお力の強まり)と呼びます。
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3.お年玉の意味は?
正月には子供達がお年玉を頂きます。今日ではお金ですが、本来は「歳魂」つまり「年初の霊力」のことでした。ですから一家の主が家人や使用人たちに与えるところに意味がありました。科学万能の今日では信じられぬという方もいるかもしれません。しかし古人はこのような時期に努めて霊力を得ようとしたのでした。
お祭りに神輿を担ぎ山車を引くのは、御祭神のお力の高まりを期待し、その恩頼に預かろうとするためでした。
お盆に祖先を祭るのは幽世(死後の世界)から帰った者を労うのではなく、子孫を祝福するために訪れた祖先の霊力を讃え、これに与かろうとしたためです。
同様にお年玉には年の初めに霊力を分けていただく、という意味があったわけです。
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4.なぜ初詣をするの?
最近では正月三が日の休業という古来の伝統が破られました。若者が町に出るようになって、大人たちもこれに習ったためです。わざわざ年頭の三日間を休みにするのには意味がありました。神様や祖先を迎え、おもてなしをするためなのです。そのためには厳重な忌み籠りが必要でした。そのお籠りの日が大晦日で、この日に一夜飾りをしないのはそうした理由があったわけです。
三が日が過ぎると人々は初詣に出かけました。それは江戸時代に起こった「恵方参り」に始まったと言われます。その年の最も良い方角にある神社・仏閣にお参りすれば一年間が幸福に満たされると信じたところからでています。
今日では、大晦日から元旦にかけて参るのを一般としますが、これは江戸時代以降に始まり定着した形なのです。
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5.なぜおみくじを結ぶの?
わが国では古くから魂を結び籠めることで願いが成就すると考えて来ました。握り飯を「おむすび」と呼んだのも、ご飯を結んで米の持つ力を更に引き出そうと考えたことによります。そこで、おみくじを結ぶ行為には、「叶いそうな願い」や「実らぬ」と出た結果を「何とかしたい」と思う無意識が働いているようです。
ですから、必ず結ばなくてはいけないというわけではありません。
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6.おみくじはどう受け止めればいいの?
古くは神様にお尋ねしてから物事を行いました。つまり「くじ」は生活の一部だったのです。
その名残は今日の「くじ引き」にも微かに残っています。当たり・外れの感覚には僅かですが期待と不安とが入り混じっています。
「おみくじ」とは「くじ」を丁寧に言ったことばで、初めから占いの一種でした。その「おみくじ」に書かれた全てを読む必要はありません。最も気に掛かる事柄だけを見ればよいのです。
確かに凶については持ち帰りたくないところですが、結ぶことにより書かれている結果になりませんようにと願いを籠めて結ばれる方が多いようです。逆に良い結果は持ち帰り、身近なところにおいておくといった方もおられます。
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7.寒の水を汲むのはなぜ?
国内の各地には一年の最初の日に「若水」を汲む習慣があります。万葉集に「変若水」とかいて(おちみず)と読ませる例があります。
「おち」とは若返りを言うことばです。中臣寿詞という祝詞には、水は神々の世界からもたらされるものだと伝えています。心身の活力をみなぎらせてくれる大切な水、これを神様やご先祖様にお供えするのも日本において古来のならわしでした。
旧正月のころに汲む「寒の水」を体によいと言い伝えるのには、そうした背景があります。
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